ご機嫌いかがでしょうか?
サウナグッズ研究室です。
さて、今回は「サウナハットの効果を比べてみた」記事です。
ご興味ある方は是非読んで行ってくださいませ!
サウナハットの結論
いきなり【結論】めいた事を申し上げますが、サウナハットは自分が気に入ったものを長く愛用するのが一番良さそうです。
理由としてはお気に入りじゃないと「結局使わない」「大事にしない」でしょうし、現実的には「金額感」などもサウナハット選びの大きなポイントになると思います。
また、効果測定をするには「カバーできない要因」があり、今回の記事ではまとめきれませんでした。
とはいえ検査機関を通すことである程度「差」が見えて面白かったので、報告させていただきます。
サウナハットの効果の定義
「サウナハットの効果」をどう定義するか?についてですが、いくつか複合的な要因があると考えました。
要因1.生地自体の性能について
生地自体の「断熱性」が最も大きな要因であると考えました。
あとは「気密性」も影響が大きそうですが、特に「通気性が高い生地」でなければそれほど内外の空気が入れかわらなそうな印象です。
要因2.形について
形の差によって体感が変わる可能性は大いにあると思います。
要因3.使用方法について
「乾いた状態」で使用するケースと「濡らした状態」で使用するケースが考えられます。
さらにいえば「濡らした状態」の時に、「帰化熱」で奪われる温度が影響しそうだなと考えました。
要因4.体感との比較
「体感」がどれほどあてになるのか?も知りたいなと思ったので、事前に出来るだけ条件を揃えて試した個人的な「体感ランキング」を準備して比較してみようと考えました。
打ち合わせ
上記の要因があるであろう「サウナハットの効果」を測定したいと伺ったのは、前職の「国産アウトドアブランド」で働いていた時にお世話になっていた、一般財団法人カケンテストセンターさんです。
「サウナハットの効果を測定したいのですが...」というおそらく(?)日本初のヘンテコな問い合わせに真摯に相談に乗っていただけました。
ただし上記の要因を全て測定するには専用の測定機械を製作せねばならず、その場合に「3桁万円以上(下手すると4桁)の費用がかかる」とのことで、現実的かつコスパの良い方法を一緒に考えました。
サウナハットの検査方法
サウナハットに使用される「生地」に着目し、断熱性(=保温性)の試験を実施しました。
①30℃に加熱した熱源の上に試料(生地をカットしたもの)を置き、加熱をストップ。
②生地の試料を被せて保温。
③時間経過でどの程度熱源の温度が保たれているか(=どれだけ熱が逃げてしまったか)を計測します。
イメージはこんな感じです。※検査方法の詳細は記事の最後に記載
検査するのは以下の5種類の生地です。
1.ボアxワッフルボンディングロシアンボアサウナハット
組成:ワッフル:綿100% ボア 基布:ポリエステル100% パイル:ポリエステル50% レーヨン40% ウール10%
2.ロシアンボアサウナハット[1.1]
組成: パイル:ポリエステル76% アクリル24% 基布:ポリエステル100%
3.クイックドライ バンブーサウナターバン (厚)
組成:ポリエステル90% 指定外繊維(竹)10%
4.金田一サウナハット(とよく似たウールフェルト:厚さ1mm 製品は1.2-1.3mm厚程度)
組成:ウール100%
5.サウナ施設さんであるような一般的なタオル生地
組成:綿100%
以上の5種類を検査機関に持ち込んで試験していただきました。
「一般的なタオル生地」を入れ込んだのは、「サウナハット代わりに頭に巻く」シーンがあると想定したためです。
自分でもサウナハットを忘れた時によくやっちゃいますし、直感的に理解しにくい「単位」で比べるよりも、経験的に伝わりやすそうな比較対象になってもらおうと思って盛り込みました。
こちらの試験では「乾いた状態」での断熱性(=保温性)を計測します。
「濡れた状態」は今回の試験では測定不可能なので今回は諦めました。
「形の差」に関しては「2枚重なっている部分は単純に倍になる」というような推論でカバーできそうです。
今回の試験用の試料は完全にフラットになる必要があり、製品から試料片を切り出してもどうしてもカーブができてしまうという理由があったので、よく似た少し薄め(1mm)のウールフェルトを使用しました。
※「金田一サウナハット」は厚みが1.2-1.3mm程度あるウール100%の一体成形
サウナハットの体感ランキング
事前に同じサウナ(深夜の池袋プラザ)で一週間かけて「体感」で比較。
あくまでも個人の見解ですがこんな印象です。
改めてきちんと比べると「タオルはハッキリと効果が薄い」と感じました。
体感ランキングは少なくとも「形」の要因が含まれてしまうので試験結果とは本来比較できないものではあるのですが、全て同じ形でサンプル制作しての比較もまた不可能なためその辺りは推論も交えてになります。
試験結果とのブレはどこまで出るのか楽しみです。
生地試験の結果
わかりにくいので変換します。
これで「生地」の性能が明らかになりました。
さらに「形」に関しても推論していきます。
例えば「生地が2枚になっている」作りであれば「2倍の断熱性」があると推測できるからです。
ざっくりとはしていますがなんとなく納得感はある「製品断熱パワー」を仮定してみます。
この「製品断熱パワー」でランキングして、合わせて「体感ランキング」とも比較してみましょう。
仮説や若干の飛躍も含みの結果なので、個人の意見ではあるのですが…
まずは「外すならもっと大きく外せよ」と自分自身にツッコミを入れてしまいました。
しかし「製品断熱パワー」自体はそれなりに分かりやすく納得感のある基準であると思います。
なぜなら、「サウナハットって意味あるの?」の問いに、「こちらの製品はタオルを巻く場合と比べて〇〇倍の断熱性能が予想されます」と言えるからです。
さらに個人的な「推し繊維」である「ウール」で言えば、この中で一番薄い(綿100%タオルとそれほど変わらない)わけです。
ということは「断熱効率」「持ち運びの利便性(=薄さ)」という観点で言えば一位かもしれません。
意外だったのは「QDサウナターバン」の性能が思っていたよりも相当高かった事。
製品のイメージとして「サウナハットの手前にある着用しやすさ」を目指して作りましたが、性能に関して「サウナハット」と比べてもなんの遜色もなかったことが「体感」だけでなく言えたのは嬉しいです。
比較対象として使わせてもらった「綿100%のタオル」ですが、繊維の特徴と使用用途を鑑みれば妥当な性能だと思います。
シンプルに言えば「そういう用途に向けて作った繊維・生地じゃない」ので、今回の試験での引き合いは「短距離走者」に「遠泳」させてる感じでちょっと申し訳ないですね。
また、「ランキングの上位3つ」は固定なことから「体感ランキング」はそれなりに当たっているとも取れると思います。
「ある一定の断熱性能以上は体感では判断が難しい」可能性や、「そもそも頭部を熱から守る話であって、体全体としての影響には限りがある」などの仮定も導き出せます。
製品断熱パワーが高い製品をサウナ内に持ち込んだとしても、滞在時間はせいぜい6分が8分になるとか10分が12分になる(20〜30%程度の変化)ような話だからです。
体感ランキングで「絶対王者」とまで感じさせたボアxワッフルボンディングロシアンサウナハットについては、何よりも「モノとしてのガッシリ感」がすっごくある製品(かつ制作に手塩がかかりまくってる製品)なので、そういう印象からくる「プラセボ効果」もあるかもしれません。※言い訳含みです!すみません!
もっと言えば「そもそも暑さってどこで感じてるのか?」「頭のパーツで言うとどこを守れば効率的なのか?」「生地の気密性はどの程度影響するのか?」など新たな謎が増えてしまいました。
一つの答えが新たな謎を呼ぶこの展開、取り組みがいがあると思ってしまいますね。
終わりに
冒頭でお伝えした通り
サウナハットは自分が気に入ったものを長く愛用するのが一番良さそうです。
理由としてはお気に入りじゃないと「結局使わない」「大事にしない」でしょうし、
現実的には「金額感」などもサウナハット選びの大きなポイントになると思います。
という意見は変わりません。
現実には「デザイン」や「金額」「その他の付加価値」でサウナハットを選ぶ事の方が多いと思いますし、私もそうです。
SDGs的な観点のある方が「染色されていないウール」を使い「リサイクルに出す」なども素敵ですし、誰かが自分のために作ってくれたサウナハットは「断熱性」以上にあなたの心を暖めてくれますよね。
そのため、購入される際はあまり考えすぎずに「ゴキゲンにサウナライフを楽しめるか?」くらいの感覚で選ぶのが良いと思います!
ではみなさま「良きサウナライフ」をお送りくださいませ。
注:今回の試験は「KES-F7 サーモラボⅡ使用 ドライコンタクト法 熱版温度30℃ 風速30cm/s」にて実施。