こんにちは!サウナグッズ研究室のnoteです。
みなさん、サウナハット好きですか?
「装備すると守備力UP!」っていうアイテム感もいいし。
「お気に入りの一個」を探す楽しみもあります。
めちゃめちゃ検索したことある人いらっしゃいますよね笑
施設さんのオリジナルとか、サウナハットを手作りする方も増えてきているように感じますし、選択肢が増えるのは良いことだと思います。
そんなサウナハットの魅力を今回もマニアックに愛でていこうと思います。
日本におけるサウナハットの夜明け
誰がなんと言おうと、日本におけるサウナハットのオリジネイターといえば
この方々です。
圧倒的にかっこ良いSAVOTTA社のテントサウナと、
圧倒的にかわいいサウナハットを世に知らしめ、
サウナハットは愛好家たちがこぞって買うから
常に「即完売」現象を巻き起こしました。
(めちゃくちゃ端っこな世界でだとは思いますが)
そしてコレ
この本、表紙の裏に書いてある「サウナハットの作り方」を目当てに買った人も多いでしょうね(僕もその一人)。
買ったその日にウールとプチプチをポチり、
自らの手で不細工な「サウナハットではない何か」を錬成した人もまた、
多かったのではないでしょうか?(僕もその一人)
今に至る「ウールをフェルト化して作るサウナハット」のムーブメントは
彼らが起源と言っていいと思います。
個人的な感想ですが、TentSaunaPartyさんのサウナハットは肉厚で、
「モノとしての存在感」が画像からでも伝わってくる感じがしました。
最近見かける「手作りでウールをフェルト化して作るサウナハット」の中には
「そんな薄くて大丈夫?」と感じる物も正直、あります。
オリジネイターでありながら
いきなり「しっかりした品物を作る」姿勢も含め、
TentSaunaPartyさんはずーっとカッコいいですよね。
という訳で、このままの流れで
「ウールをフェルト化して作るサウナハット」
から愛でていきましょう。
ウールをフェルト化して作るサウナハット
こういうやつです。
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www.etsy.com
まず愛でたいポイントとしては
・圧倒的に愛情がかかる
・一点ものである
というところでしょうか。
弱点は
・同じものが作れない
・作り手の諸々がダイレクトに反映される
かなと思います。
それぞれのポイントの前に、そもそも
「ウール」の「フェルト化」ってなんやねん?ということを説明しますね。
まず「ウール」についてですが、
天然繊維の中の、動物性繊維に分類されます。
「メリノ」とか「カシミヤ」は「ウール」の中の種類です。
よく似た仲間としては「アルパカ」とか「キャメル」など。
これらは取れる動物の種類が違いますね。
要するに「羊の毛」=ウールです。
こういうの見たことありますよね?
ここで一点問題です。
上の画像を見ても分かるとおり、
羊の毛っていうのは長く見積もっても15cm-20cm程度かな?
という感じだと思いますが、
「ウールの糸」はどうやってあんな長くなっているでしょうか?
答えは
今回関係ないので、次回以降の記事に回します笑
さて、ウールの ”繊維” としての特徴ですが
・断熱性が高い(空気をよく含むことができる)
・水は弾くけど、湿気は吸い取る(=汚れにくい)
なんかもう「サウナハットに向いてます!」って感じですね笑
あと、動物性繊維全般に言えるかなと思うのですが
・組織が人間の髪の毛に似ている
なんかこういう画像、シャンプーとかのCMで見たことないですか?
この画像の右側のこう「鱗状」になっている感じがウールの繊維(イメージ)なんですね〜。
「ウールはチクチクする」みたいなイメージありませんか?
はいコレ。
コレが答えです。
こんな「目に見えないチクチク」を感じとる人の皮膚、すごいですよね?
「え?でもオレ、ウールのインナー持ってるけどさほどチクチクしないよ!?」
と思ったそこの貴方、今度会った時説明しますのでちょっと待っててください(笑)
さらに、
「え?ワイの持ってるウールのサウナハット、全然チクチクせんやん!」
と思ったそこの貴方、鋭いです。
次で解説させていただきますね。
興味がある人はこういう記事を掘っていろいろ調べてみると面白いかもしれません
ウールのフェルト化
はい。「フェルト化」です。
「フェルトに化ける」から「フェルト化」なんですけど、
「フェルト」とは?
フェルト - Wikipedia
ja.wikipedia.org
織っても編んでもなく、繊維を板(布)状にすること だそうです。
繊維の種類によって「フェルト化」の仕組みは違うので、
今回はウールに関して説明します。
実は「ウールのフェルト化」については
「ウールは何故縮むのか?」を説明するのと同じなんですね〜。
それには大きくわけて二つの要素があります。
・熱によるダメージで縮む
※コレは原理で言うと、「そのウールが経験した最高温以上には縮まない」という事らしいです。つまり、ぬるま湯程度から縮めていき、どんどん高音の熱湯にしていくのが一番丁寧に縮ませる方法だそうです。
・摩擦によって繊維一本の、さらに一個一個の鱗が噛み合い、それが二度と戻らないために縮む
この二つの要素でどれだけ繊維に対して
「もう縮めません!」って言わせるか。
つまり「縮みきったウール」=ウールフェルトなんですね〜。
ここで愛でたいポイントの一つめ、
・圧倒的に愛情がかかる
を説明できるかと思います。
「濡らして、熱をかけて、摩擦する」のが縮ませる大きな要素。
なので「水洗いして、乾燥機にかける」とガッツリ縮むことがあります。
成人女性のざっくりしたセーターも一発で「幼児用」くらいになったり。
逆にいうとそんくらいある「縮む余地」を
めちゃめちゃ擦ったり熱湯をぶっかけたりして、
繊維同士が「もう縮めません!」っていうまでを ”手” でやる
訳です。
ちなみに冬物のコートなどで見かける「ウールメルトン」の作り方の原理は全く同じです。こちらは機械ですが笑
先ほど、
「え?ワイの持ってるウールのサウナハット、全然チクチクせんやん!」
ってなった人に向けて乱暴にざっくり説明すると、
「チクチクが目立たないレベルまで、誰かが”鱗”を噛み合わせたから」
と言い換えても良いかと思います。※厳密には違う要素も絡みます。
すごくないですか?
ちなみにこういう作り方なので
「しっかりした厚み」や「何回使ってもさほど縮まない」というのは
作り手さんの「愛情」や
自分で何回も使う→
思ってたよりも縮む→
フェルト化が足りなかったか...→
よっしゃ次はもっとガチガチにフェルト化させるぞ!
という試行錯誤、物づくりの真摯さが直結します。
作ったことない人に説明すると、
「サウナハットではない何か」を錬成するにも2時間くらいは余裕で溶けます(笑)
また、手作りのサウナハットのウールフェルトは
「不織布」の一種になる(織物や編み物ではない)ので
「厚み」は「丈夫さ」(と作業時間)に直結しますし、
さらにいえば「断熱性能」もそれに比例します。
「モノ」として考えるなら、薄い部分があっても1.5mm、
欲をいえば平均で2.5-3mmくらいは欲しいですね。
続いての愛でたいポイントですが
・一点ものである = ・同じものが作れない
・作り手の諸々がダイレクトに反映される
これらは魅力でもあり弱点でもあります。
さらにいえば「サイズがわからない」のも若干怖い点ではありますね。
例えば
「めちゃ気に入ったのに穴が空いちゃった」
「使っているうちに縮んじゃった」
などもそうですし、
作り手側の、
厚みやデザインに対する「まぁこんなもんかな」という感性や、
「ちょっともう、時間が作れない」とか、
シンプルに「飽きちゃった」というのも全然あると思います。
(作業内容は何個作ろうが洗練のされようがほぼない)
4,000円程度で販売されている方は、(クオリティをしっかりと担保した上であれば)もっと高い値段を付けてもいいと思います。具体的には1.5-2倍付けていいと思います。
使い手側は「ビビッときた!」と思ったらその時が手に入れるタイミングです。
とはいえ気に入っちゃったら、厚みとかサイズ感とかわからなくても
「それしかない」ので買う時は悩ましいですね笑
なので、プロダクティブな魅力というよりも
「ものすごく手間のかかった作家さんの一点もの」
って感じで、大事に使って「愛でる」のが良さそうです。
続いてですが、
「縫製によって作られるサウナハット」(布編)
についてです。
縫製によって作られるサウナハット(布編)
こういうやつですね。
あとはこういうのとか
https://item.rakuten.co.jp/naturum-fashion/2988118/
こういうやつの「愛でたいポイント」は、
なんと言っても
・素材、デザインの自由度
ですよね〜。
サウナハットという「お題」に対して
「自分の考える一つの答え」を出せるのが魅力ですよね。
繊維製品に関して、「オールマイティ」なんてものはなくて、
繊維の種類、織り方や編み方にも特徴があり、
型紙のカーブに意図があったり、
縫製の上手さが纏わせる雰囲気があったり、
いろんな要素を「予算内に収めなきゃいけない」という大人の事情もあり、
さらにそうやって緻密に考え抜かれたものでも
「可愛くない!」一発でひっくり返されるような面白さというか笑
(ただ、人間の肌は敏感なので、そういう物は概ね「なんか着ちゃうヤツ」にはならないですね)
そういう意味でもRepos社さんのサウナパンツの完成度の高さと言ったら。。。
すみません。逸れました笑
さて、
サウナハット界においての絶対的シェアは「ウール素材」なんですが、
その絶対強者に対して、「こういうのもよくないですか?」という感じで提案できる/されるのは魅力的です。
例えば、さっきのコレ
[SAUNA HAT GUSS] サウナハット/サウナでの「のぼせ予防」に効果的、髪のダメージ軽減にも役立つ (ルビー, M)
初見の印象で、
個人的には「ワイコレ似合わなそうだな〜」なのですが笑
商品説明がこちら
画像10
裏地がリネン!
マニアック!
おもしろ!
ってなりました。
しかもサイズ展開と色展開ができるのもいいですよね〜。
そしてこの章を語るのにコレは外せないですね。
錦糸町ニューウイングさんの「にゃーハット」(など)
コレらは「氷を入れとくポケット」があったり、
あとは生地のパネルの配置、形にこだわりがあるのですが、
それを一個一個「デザインに落とし込んである」という魅力がすごいです。
コレだけで短めの記事一個かけちゃいます。
しかも!保護猫ちゃんたちへの寄附金つきだったり。
このあたりのストーリーは「猫ちゃん狂想記」を買って読んで欲しいし、
にゃーハットのデザイン(仕様)は吉田さんに聞くと面白いと思います。
個人的にはコレを縫ってる縫製工場のおばちゃんにも話を聞きたいです笑
続いてはコレ、タオル素材のサウナハット。
タオル素材のサウナハット
このベルクロの開閉に意味があるかどうかはおいといて笑
タオル素材は一個いいアイデアだと思いますね。
タオルは生地の組成上、空気を含みやすいので断熱性が期待できるし、
何より「生地としての安心感」(触ったことある、扱ったことある)があるので、「イージーケア」感が手に取りやすいと思います。
ただ個人的に心配なのが、
「タオル生地は絞りたくなる」と思うので、
縫製の仕様や糸の選び方によっては、
絞ったら糸が切れちゃいそうな気がします。
あとは生地の選定が難しそう。
タオルは生地によってかなり洗濯で痩せてくので、
コスト感含め悩ましいところな気がします。
(タオル生地は割と高い)
あとは縫製もの全般に言えることですが、
「縫い代の始末」をどういう風に落とし込むか?
でかなり着心地に響きます。
※そういう意味で「にゃーハット」はおべっかなしで「すごい出来」です。
まとめると
「縫製によって作られるサウナハット」(布編)は
「作り手の意図が反映される(=作家性もある)製品」という感じですね。
続いて
「縫製によって作られるサウナハット」(ウールフェルト編)
です。
縫製によって作られるサウナハット(ウールフェルト編)
こういうヤツですね。
この写真の上の5人のかぶってるやつがそうです。
この手のやつ、
海外のサウナに行った人がお土産感覚で複数買いしたり、
「〇〇では××円くらいで売ってるよ」など、
見聞きしたことがある人も多いと思います。
この手のサウナハットの愛でたいポイントは
・圧ッッ倒的なコストパフォーマンス
と言っていいと思います。
まず、生地からいくと
使っている生地は「ウールフェルト」がほとんどだと思います。
機械でフェルト化させているので、厚みが均一。
ただし、意外と弱くて特に厚いものは手で裂けるものもあります。
(コレはなんでそうなるのか謎ですが、実際そんなの補って余りあるすごさがあります)
繰り返し使っても縮まない印象。
コレはおそらく、生地を割と高温でボイルしてると予想します。
厚みにいくつかバリエーションがあり、見たことあるのは1mm〜3mm程度。
コレ、ポイントだと思うのですが
日本国内の一般的な生地屋さんだと「3mm厚」ってほぼ売ってないです。
あと仮に売ってても高いですね。
続いて縫製仕様なのですが、
以前こんなツイートをしてしまってます。
このサウナハットの“作り”を電話で説明するという事案があって、改めてまじまじ👀見てたら「えっ⁉️」って声出た。全く気づかなかったけど実は結構すごい縫われ方してた😳
文化の違いなのかコレが“当たり前”ってすげ〜。
そして縫製すごいのにヒモがすぐ取れるのウケる笑 pic.twitter.com/Cn6wP0hSsj— ポニョリオン (@ponyolion) March 3, 2020
この時「えっ!?」ってなったポイントは今回のトップ画像にも表現されてます。
サウナハット縫いいめ
コレですね。
この「ジグザグの糸」が生地を縫い合わせているのですが、
この白い生地と、グレーの生地はどのように縫われているかわかりますか?
ここで一般論ですが、
「普通の縫い方」ってこんな感じで縫いますね。
この「縫い代」を右のように割ったり、片側に倒したりするのが
「縫い代の始末」なのですが、
コレはデザインであり、着心地に関わるポイントだったりします。
例えばデニムの足の部分。
左が外側で、縫い代は「割って」ますね。
右は内股側で、縫い代は「揃えてオーバーロックして片側に倒す」という始末です。
さらに丸く囲った裾の部分ですが、
どちらも「二回折り返して」ぐるっと縫ってあります。
この時のそれぞれの最大の厚み
(=ミシンが何枚分のデニム生地を縫わなければいけないか)は
ピンクの方は「デニム生地6枚分」
ブルーの方は「デニム生地9枚分」 となります。
すごくないですか?
ちなみにこの画像だけでミシンは「3種類」使用されています。
「家庭用ミシン」と「工業用ミシン」って物が全然違いまして、
家庭用ミシンは「いろんなことができるけど、エンジンがしょぼい」
工業用ミシンは「一個のことしか出来ないけどモンスターエンジン」
という感じです。
なので
「希望の縫い方ができるかどうかは、工場に該当するミシンがあるか」
で決まっちゃうんですね。
コイツの話に引き戻します。
コレ、生地の厚みが3mmあるんですが
3mmもある生地を何も考えずに縫製したら、
すぐに厚みが1cmに届いちゃいそうな気がしませんか?
1cmに届く出っ張りが縫い目ごとにあったら、普通かぶれないですよね笑
しかし、断熱性に重きをおけば、
「絶対にこの生地(厚みのあるウールフェルト)を使いたい!」
という。
こういう相反した状況での最適解は何か?
答えは
この帽子、「縫い代」がありません。
コレは事件です。
「付き合わせ」といいますが、
似たものだと、
高級スウェットなどで「縫い目をフラットしたい」
みたいな物で使われます。それでも「付き合わせ」ではなく重ねているのと混ざってる物が多いです。
フラットシーマ - UES用語集
ues.co.jp
コレはワイの私物ですが(毛玉とほこりスミマセン)
こういうやつですね。
ラグラン、丸胴、4本針、全面フラットシーマ(付き合わせ)です。
なので裏返しても同じ「見た目」です。
写真のサウナハットはほぼ完全に「付き合わせ」です。
どうです?すごくないですか?
で、縫い目ですがこの特徴的なジグザグは
「千鳥縫い」といって、ミシン自体が割とレアなのと、
縫製ロットが大きかったり、ごまかしが効かない(付き合わせなので特に)縫い方でもあるんです。
例えばコレに似た製品を日本で企画して作ろうとすると、
・まず生地がない
・縫えるミシンがない(あっても縫製ロットが大きい)
という大きいハードルがあるため、
仮に作れたとしても、
もんんのすごい高価になるか、びっくりするくらい在庫しないといけない
と思います。
逆に、なぜ海外ではそのような物が安価で手に入るのか?
ですが、コレは
「消耗品として認知され、企画しているから」
の一言につきます。
ミシンが特殊でも、
生地が特殊でも、
数十年安定して注文が入ることが見込めればやりますよね。
ウラジオストクに行った際にもイ○ンみたいなでっかいスーパーでは普通に売っているし、銭湯みたいなバーニャでも普通に売ってました。
ウラジオのでっかいスーパー↓
つまり、
「縫製が難しい」
「生地が特殊」
という大きなハードルを、
「消耗品として市場が買い支えている」
という構図です。
多分、サウナハットが安く売ってる国では
「洗濯どうしよう?」とかあんま考えないのではないでしょうか?
ノリ的には「破れたら捨てる」とか、
「やっべ、家に忘れてきたからそこのイ○ンで買ってっていい?」
くらいの感覚と思われます。
サウナウィスクも同じような感じですね。
まとめると、
「縫製によって作られるサウナハット」(ウールフェルト編)
は
「圧倒的な文化の違いによるプロダクティブな魅力」と言えると思います。
さて、今回は「サウナハット」についてマニアックに愛でてみました。
それぞれの作り方の中にもグラデーションがありますし、また絶妙に紹介しきれていないサウナハットもあります。
是非いろいろ試して、お気に入りの一個を見つけるお手伝いができれば幸いです。
あとはいつか「僕の考えるさいきょうのサウナハット」作ってみたいですね〜。
マニアックなサウナグッズ販売してますのでよかったらみてってください。